★絶版★モニカ・レイムグルーバー「ちいさなスリッパぼうや」草原に棲むちいさな妖精、透明ぼうやのおはなし 

モニカ・レイムグルーバー「ちいさなスリッパぼうや」

「ちいさなスリッパぼうや」
マンフレッド・キーバー/文

モニカ・レイムグルーバー/絵
くすだえりこ/訳  ほるぷ出版

マンフレッド・キーバーは、ドイツの作家、批評家、哲学者。
このおはなしは、彼の「妖精物語集」の一編だそうです。
画家のモニカ・レイムグルーバーはキーバーの物語に共感をもち
絵本作品に仕上げました。
独特の点描を用いた美しい絵で、おはなしの世界にひきこんで
いきます。

ちいさなちいさな男の子がいました。
おまけに透明でだれもその姿をみたこがありません
ただし、くさっばの魔女だけが魔法の力で見ることができました。
魔女がいうには「見えたところでどうっていうことはない」
「ひとりで歩きまわっているだけで、他に何もいうことはない。」

それを聞いた男の子は腹をたて、みんなに自分のことを
見てほしい、噂してほしいと思いました。
男の子は市場に行って、スリッパをはくと、そのままとっとこ
歩き出しました。

透明な男の子ですから、スリッパだけがぱたぱた勝手に歩いて
いることに、町の人たちはびっくり!大騒ぎ!

男の子は自分のことが話題になっていると、鼻たかだかで
通りをかけ抜けていきました。
でも、男の子が見えているわけではないんですけどね。

くさっぱにもどってきた男の子は、ここでもみんなに見てほしい
と思いました。
ところが思うようにいかず、結局悲しいめにあって、男の子の
夢は無残にやぶれてしまいました。

誰にも持って生まれた宿命のようなものがあって
どんなに望んでも、努力しても、思い通りにいかないことって
あるものなんですね。
なんだか、哀れで否定的なおはなしのように思えますが
身の丈に合った楽しさや幸せもいいものかなと。
モニカ・レイムグルーバーは、おはなしにはない最後の絵で
そんなことを見せてくれます。

それは、男の子がくさっぱの仲間の仕事を手伝っている様子です。
物だけが浮かんで見えているのを、いたずらっこのように
クスクス笑っている、たしかにそんなふうに見えます。
感じるという心の目でね。

SHOPページをみる