「国際アンデルセン賞・画家賞」受賞、ファルシード・メスガーリの版画絵本「ちいさな黒いさかな」イランの絵本
ちいさな黒いさかな
サマド・ベヘランギー/作
ファルシード・メスガーリ/絵
かがわゆうこ/訳 ほるぷ出版
本の状態など詳しい商品説明は→→こちら
1974年に「国際アンデルセン賞 画家賞」を受賞した
イランのファルシード・メスガーリの版画絵本です。
(絵本の裏表紙には、1978年と記載がありますが、
正しくは1974年です。)
本書は、1984年ほるぷ出版版の初版本です。
多色刷りの版画で、版画ならではの重厚な描画、ダイナミックな構図
色刷りもうつくしいです。
見開きページ全体を使った絵だけのページもある一方
文字だけで、絵のないページもあります。
絵もさることながら、サマド・ベヘランギーの童話が
大変面白いです。
海の底で、さかなのおばあさんが一万二千匹の子どもや孫をあつめて
語ったおはなしです。
ちいさな黒いさかなは、小川に住んでいました。
ある日のこと、今住んでいる小川から出て
小川の終わりを、そのまた果てを、世界を見に行こうと決心し
冒険に出かけました。
そんなことを考えるなんてと、お母さんにも小川の他のさかなたちにも
その後出会うみんなにも、ばかにされ、何度も死と向き合いながらも
自分の思いをとげようと、強い意志をもって、希望をすてず
あきにめず、力強く前にすすむ、ちいさな黒いさかな。
とうとう海に出ることができ、幸せな気分で泳ぎながら
こんなひとりごとをいいます。
「死というものは、すぐにでもぼくのところへ来ることができるけれど、
ぼくは生きられるかぎり、自分から死をむかえに行ってはならないんだ。
もちろん、いつか死と向かいあわなければならないときがきたとしても
―いずれはそうなるけれど―それは大したことじゃない。
大切なのは、ぼくの生や死がほかのひとの人生をどうかえられるかという……」
突然、ひとりごとは途中で終わります。
ちいさな黒いさかなは、あおさぎにくわえられたのです。
あおさぎの口ばしのなかでもがくちいさな黒いさかなは
このあと、どうなってしまうのでしょうか。
おはなしはクライマックスへと続きます。
おばあさんのおはなしは終わりました。
一万九千九百九十九匹のちいさなさかなたちは、眠りにつきました。
ところが、一匹のちいさな赤いさかなだけは………。
果てにあるものは、いったい希望なのか破滅なのか
たとえ何が待っていようとも、未知へのあこがれのおはなしは
エンドレスにつづく予感です。